愚 想 録 (平成29年) (平成29年1月~平成29年12月)

*毎年その年に書きためた時々の随想を一冊にまとめた「烏川愚想録」(うせんぐそうろく)を発行しています。


     七〇 ●武士の一分                       (一一月一一日)

 希望の党の国会議員の共同代表に玉木議員を選出した。しかし、先の国会では、希望の党は一致して同党の渡辺議員を総理大臣に指名した。渡辺議員は何だったのかと言うことになる。年長の故をもって総理大臣に(党としては)指名するということだったのだろう。どうせ国会の多数を占められる訳ではないのだから、首班指名は誰でもよいという考えだったのだろう。
 それにしては渡辺議員は身の引き締まる思いなどと相応の発言をしている。代表選挙にも立候補するつもりだとの考えを示していた。当人は身が引き締まったかもしれないが、首班指名に渡辺票を投じた人は、そんな気持ちはさらさらなかったのだろう。要は八名の推薦人が集まらなかったと言うことである。渡辺議員は人気がないなどというつもりはない。実際に人気があるのかないのか知らないが、必ずしも優秀だからと言って、あるいはまじめだからと言って、票が投ぜられる訳ではない。議員の中で色々な思惑が働いた結果なのだろう。
 結局の所、渡辺議員は党内で虚仮にされたのである。どんなやりとりがされたのか知るよしもないが、傍からみれば祭り上げられて神輿から落とされたということになる。もちろんはじめから納得づくなら何も言うことはない。代表にはならずとも懐の深さを垣間見ることもできる。
 さて、愚輩ならどうするだろうか。全党一致で首班指名をしておいて、代表戦に立候補しようとしたら推薦もしない。そんな組織はとっとと抜けてしまうに違いない。その先のことを考えたら、それで政治家は終わりかも知れないが、最後に政治家の矜持は保つことができる。
代表選に出られなかったことくらいで、あるいは負けたことくらいで、いちいち脱党することはないという考えもある。挑戦して敗れたのなら再起を期せばいい。しかし、愚輩にはそういう状況には映らない。武士の一分を見せる場面ではないかと映る。